遺言書・相続についてのFAQ

Q.そもそも遺言とは?

遺言とは、人生で最終の意思表示のことです。
自分が生涯をかけて築き上げた大切な財産を分配する「財産に関する事項」、
非嫡出子を認知することや未成年後見人の指定などの「身分に関する事項」、
遺言執行者を誰にするかという「遺言執行に関する事項」、
これらを遺言者自らが決め、法律で定められた方式で書面を作成し、
法的効力が生じるものです。

(遺言の方式とは)
遺言の方式には、大きく分けて「普通方式」と「特別方式」があります。
「特別方式」は緊急事態に至った場合に限り認められている方式であり、
通常は「普通方式」が利用されます。
普通方式の遺言の中で最も多く利用されているものは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。

Q. 遺言がない場合の手続きはどうなりますか?

遺言のないときは、法定相続となります。
民法900条で相続人と相続分を定めていますので、これに従って遺産を分けることになります。
民法では、故人の配偶者や血の近い相続人ほど遺産を多く相続するように定められています。
故人に妻と子供が二人いた場合は妻に2分の1、子供にそれぞれ4分の1ずつ相続されるのです。
抽象的に相続分の割合を定めているだけなので、遺産の帰属を具体的に決めるためには、
相続人全員で遺産分割の協議をして決める必要があります。

しかし相続人の間で自主的に協議をまとめるのは、容易なことではありません。
例えば、子供のうち一人だけが両親の介護を無償で最期まで行ってきた場合や、
子供のころから両親と共に家業を助け、家業を継ぎ、苦楽を共にしてきた子は、
他の兄弟姉妹と遺産を平等に分けることに、納得がいかないということもあるのです。
そして少しでも多く、価値のある遺産を受取りたいと思うのが人情なのです。

遺産分割協議がまとまらない場合には

遺産分割はできるだけ相続人同士で話をまとめるのが理想ですが、
まとまらなければ家庭裁判所の遺産分割の調停又は審判で解決を図ります。
調停は、相続人のうち1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てます。
調停で解決するまでの期間は平均して1年弱。
調停で解決ができなければ、審判に持ち込まれ、審判で解決するには調停と合わせると、
長い場合で3年以上の期間がかかるようです。
これは相続人にとって心身ともに大変負担となるものです。

我が家は財産が少なく、兄弟仲が良いから大丈夫と思っていませんか?
世の中では、遺言がないために、相続を巡り親族間で争いの起こることが少なくありません。
遺言は「争続」を防止するため、自らが財産の帰属を決め、
相続を巡る争いを防止しようとすることに主たる目的があります。

例えば、妻には自宅と○○万円、長男にはマンション、二男には保有する株式の全て、
といったように具体的に決めておけば、争いを未然に防ぐことができるわけです。

Q. 遺言の必要性が高いのは、どのような場合ですか?

一般的に言えば、ほとんどの場合において、遺言者が家族関係や状況を考慮し、
遺産争いを予防するため、それにふさわしい形で財産を承継させるように、
遺言書を作成しておくことが必要と言ってよいと思います。
特に以下のような場合には遺言書作成の必要性が高いと考えられます。

子供のいないご夫婦の場合

この場合に被相続人(亡くなった方)のご両親も既に亡くなっている場合には、
妻が4分の3、被相続人の兄弟姉妹が4分の1の各割合で財産を分けることになります。
しかし長年連れ添った妻に財産を全部相続させたいと思う方も多いでしょう。
そうするためには、遺言をしておくことが絶対必要なのです。
兄弟姉妹には、遺留分がないので、遺言さえしておけば、財産全部を妻に残すことができます。

事実婚の関係にある方がいる場合

事実婚の状態(内縁関係)にある方は、法律上の婚姻関係でない限りは相続権がありません。
内縁関係の妻もしくは夫に財産を残したい場合には、必ず遺言をしておかなければなりません。

先妻に子供がいて、後妻と籍を入れた場合

後妻が籍を入れてすぐ夫が亡くなっても、妻は配偶者として財産の1/2の相続権があります。
しかし、先妻の子供としては納得できないこともあるでしょう。
このような場合、感情的になりやすく、遺産争いが起こる確率も非常に高いので、
争いを未然に防ぐために、遺言書で配分を定めておくと良いでしょう。
例えば、当面は子供に財産が多く残るように遺言し、後妻との結婚期間が何十年も経って、
相応の財産を残してもいいと納得がいくようになったときに、遺言書を書き換えることも可能です。

息子の妻に財産を残したいたい場合

息子が先に亡くなり、息子の妻が亡夫の親のお世話をしているような場合があります。
このような場合、お嫁さんにも財産を残してあげたいと思うところですが、
お嫁さんは相続人ではないので、遺言で財産を遺贈する旨を定めておかないと、何も残せません。

個人事業主の事業承継の場合

個人商店や町工場、農業などは、その事業等の財産的基礎を複数の相続人に分割してしまうと、
事業の継続が困難をきたすことも考えられます。
後継者が事業を円滑に引き継げるように、後継者以外の推定相続人に配慮した遺言書の作成が必要です。

相続人が全くいない場合

相続人がいない場合には、特別な事情がない限り、遺産は国庫に帰属します。
したがって、特別世話になった人に遺贈したい、お寺や教会、社会福祉関係の団体、自然保護団体、
あるいは、ご自分が有意義と感じる各種の研究機関等に寄付したいなどと思われる場合には、
その旨の遺言をしておく必要があります。

そのほか、遺言者がその家族関係や状況に合わせ、承継させたい財産を指定したいときや、
身体障害のある子に多く財産を残したい、可愛いくてたまらない孫に遺贈したいという場合には、
遺言書を作成しておく必要があります。

Q. 遺言は、どのような手続きでするのですか?

遺言は、遺言者の真意を確実に実現させる必要があるため、厳格な方式が定められています。
その方式に従わない遺言はすべて無効です。
録音テープやビデオに撮っておいても、それは、遺言として法律上の効力がありません。
遺言の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という、3つの方式が定められています。

Q. 遺言書はいつ書くのが良いですか?

結論から言いますと、遺言書はいつ書いて頂いても良いと思います。
ただし、遺言書を書くことが出来る能力は必要になります。
満15歳以上になれば有効な遺言書が書けるとされていますが、遺言は意思表示ですので、
有効な遺言書を書くには、判断能力が十分にある状態でないといけません。
判断能力があるうちは、死期が近くなってもできますが、あまり死の間際に作成してしまうと、
判断能力が十分にあったのか問題となるケースも出てきます。
古いから無効ということにもなりませんので、自分が元気なうちに万一の場合に備えとして、
作成されることをお勧めします。

Q. 遺言は、訂正や取消し(撤回)が自由にできますか?

遺言は、人の最終意思を保護しようという制度ですから、訂正や取消しは、
いつでも、何回でもすることができます。
作成したときには、それが最善と思って作成した場合でも、その後の諸状況の変化に応じ、
訂正したり、撤回したいと思うこともあると思います。
さらに、財産の内容が大きく変わった場合にも、多くの場合、書き直した方がよいといえるでしょう。
遺言は、遺言作成後、いつでも、自由に、訂正や、撤回することができます。
ただ、訂正や、撤回も、遺言の方式に従って、適式になされなければなりません。
*(遺言の取消しのことを、法律上は「撤回」と言います。)

Q. 親が遺言を作成したかどうかを調べることができますか?

平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば、公証役場の「遺言検索システム」により、
遺言の存在を確認することができます。
遺言者が生きている間は、公正証書遺言を閲覧できるのは遺言者本人に限られます。
遺言者の死後も、誰でも遺言を検索・閲覧できるわけではなく、法定相続人、受遺者、遺言執行者など、
遺言者の相続について法律上の利害関係を有する人だけが利用できるようになっています。
「遺言検索システム」の利用条件を満たす方は、下記の書類を持参する必要があります。

□ 戸籍謄本(親などが亡くなったこと、亡くなった人の相続人であることの証明する書面として)
□ 本人確認書類(運転免許証などの顔写真入りの公的機関が発行したもの)

Q. 公正証書遺言を作成する場合の手数料は、どれくらいかかるのですか?

公正証書遺言の作成費用は、手数料令という政令で法定されています。
まず、遺言の目的たる財産の価額に対応する形で、その手数料が、下記のとおり、定められています。

目的財産の価額 手数料の額
100万円まで 5000円
200万円まで 7000円
500万円まで 11000円
1000万円まで 17000円
3000万円まで 23000円
5000万円まで 29000円
1億円まで 43000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に5000万円までごとに
1万3000円を加算
3億円を超え10億円以下 9万5000円に5000万円までごとに
1万1000円を加算
10億円を超える場合 24万9000円に5000万円までごとに
8000円を加算

□ 相続及び遺贈を受ける者が2人以上ある場合、各相続人及び受遺者ごとに、
  その目的の価額によって手数料を算定し、合算した額。
□ 目的価額の総額が1億円以下の場合は、11,000円加算
□ 祭祀承継者の指定は、11,000円
□ 前に作成した遺言を撤回する場合は、11,000円。
□ 病院や自宅へ公証人が出張する場合は、通常の手数料の額にその2分の1を加算、
  日当10,000円(4時間以上かかるときは20,000円)、交通費の実費がかかります。