配偶者居住権とは

夫婦の一方が亡くなった後、遺された配偶者が亡くなった夫(妻)の死亡時に住んでいた住居に、
亡くなるまで又は一定の期間、無償で使用することができる権利です。
法改正で、「所有権」と「配偶者居住権」と分けて相続できるようなりました。

配偶者居住権創設のきっかけ

約40年ぶりとなる相続法の改正により、この権利が創設されました。
大きなきっかけとなったのは、2013年9月、婚姻関係のない男女間に生まれた子「婚外子」の相続分を、
婚姻関係のある夫婦の子「婚内子」の相続分と同等にするというの最高裁判所の決定です。
婚外子と婚内子で相続分に差を設けるのは、法の下の平等を定めた憲法に違反すると判断したのです。
その後すぐ民法が改正され、婚外子の相続分が婚内子と同等になりました。

相続人が配偶者と前妻の子、もしくは愛人の子などの場合は遺産分割争いになることが多いものです。
実子であっても争いがゼロとは言い切れません。
遺された配偶者が遺産分割において、自宅を手放さなければいけなくなる可能性が高まったことから、
民法改正に至ったのです。
※旧民法では婚外子の相続分は婚内子の相続分の1/2でした。

老後に住み慣れた家に住み続け、生活費資金にも困らない

長寿社会では遺された配偶者がその後も長期間にわたって生活を継続することが少なくありません。
配偶者がそのまま自宅に住み続けるには、その自宅を相続(=所有権を取得)することです。
しかし、具体的に考えてみると、少し困ったことが出てきます。

① 自宅の不動産評価額・・・2,000万円 ② 預貯金・・・2,000万円
◆相続人は妻と息子の2人。遺言書がないので、法定相続分は1/2(2,000万円ずつ)。

①自宅を妻が相続すると、②預貯金はすべて息子が相続することになります。
これでは、妻に生活費が全く残りません。
逆に自宅を息子が相続すると、当面の生活費には困りませんが、住む家に困ってしまいます。

配偶者居住権の評価を1,000円として設定した場合の例
妻が取得 配偶者居住権1,000万円(自宅に住み続ける権利) 預貯金1,000万円
息子が取得 配偶者居住権の設定のある所有権1,000万円 預貯金1,000万円

この場合、住居の確保と当面の生活費の確保ができそうです。
妻が亡くなると、配偶者居住権は消滅するので、息子は自宅の完全な所有者になります。

配偶者居住権には相続税の節税効果があるという点でも注目されています。
しかし、良い点ばかりではありません。
所有権とは異なり売却することができません。
老人ホームの入居費用などまとまったお金が必要な時に用意できないこともあります。
その他のリスクもよく考えた上で設定するか判断していただきたいです。